2022年07月

2022年07月31日01:00

カテゴリ

たかが200円、されど200円

https://news.yahoo.co.jp/byline/yamaguchikenta/20220729-00307872

てなわけで
KDDIの通信障害によるお詫び返金が200円
安すぎるとか、
そんな金いらないから改善に使えとか
様々な意見が出ている様子です。

しかし、ひねくれものの僕はこんなことを考えました。
皆さんは「たがが200円」というかもしれませんが
実は「されど200円」
今回は返金ですから、混乱と不安のあの2日間の慰謝料としては安すぎる
そう考えるのは当然でしょう
「たかが200円」
ですが企業側としてはかなりの支出です。
それが
「されど200円」

しかしよく考えてみましょう。
その「たかが200円」を毎月集めることによって
企業は73億円もの売り上げを上げているということです。
それもその辺で見たガチャをやるかどうか（200円でできない？）
ＵＦＯキャッチャーをやるか
暑いから普段買わないけどアイスでも食べるか
そんな選択の下の200円ではありません。
もちろん毎月のスマホ代が200円なんて人はいないでしょう。
そう考えると、収益としては個人の想像を超える額（でもないか）

今時スマホがないと本当に不便
情報は入らないし、
連絡を取る手段を他に考えろと言われても
なかなか咄嗟にでてこない。
生活に必要というより
無くしては「生きていけない」ような状況をいつの間にか作り上げて
そこから200円という
「たかが」を奪い取る仕組みによって企業が儲かる仕組みを作っているということだ。

私たちはＫＤＤＩとかＮＴＴとかソフトバンクとかに
実はそのお代官様の下でしか生きられなくて
しかもいいなりに
年貢を徴収されている人間なのだということだ
逆を考えたときの私たちの小作人的な状況に改めて震撼するのである。

これは電気とか水道とかも一緒ですね。
ウクライナ戦争のせいだから200円値上げするぞと言われて
まあ、必要だから「たかが200円」なら仕方ないと思ってはいけないのではないか。
集める方にしてみたら「されど200円」なのである。
物凄い額だし、実際電気代の上昇は200円どころの騒ぎではない。

東京電力なんかは
あんな事故を起こしておいて
社員の給料は羨ましいくらいなのである

私たち小作人からかき集めた金でろくに賠償もせず
その上経営が苦しいとすぐに年貢を上げるのである。

私たちは小作人だ
たかが200円とは絶対に思ってはいけない。
されど200円なのである。

何を言ってるかわからなくなったので
おやすみなさいなのである。

※小作人の立場からすると来月のスマホ代無料位のことなら納得するが
　そうはしないお代官様には逆らえないのである。

2022年07月30日02:19

カテゴリ: フィクション

拓郎の引退を惜しんで①　「外は白い雪の夜」序章

雪が降っている。
結晶となって降っている
僕は北19条東１丁目にある喫茶店を探した
遠い昔通った喫茶店だ
珈琲はどこの店でも出しているような平凡なブレンドコーヒーしかなく
カレーライスもビーフ－カレーしかなく
サンドウィッチのトマトとレタスが何故か新鮮だと思ったら
店の庭で作っていたものだったりして

分厚いコートを羽織り
空を見上げれば頬に落ちる冷たい半固体
偶然の結晶は他のどれとも違うという

遠くに光が見える
多分あの店だろう
学生街からこんなにも離れた川沿いの土地に
ポツンと一軒家なんて言葉が似あう
都会の真ん中の店

僕はドアを開ける
鈴がカランコロンとなる
カウンターで退屈そうにファッション雑誌を眺めていたウエイトレスが振り返る
懐かしい顔だ

あれから何十年の月日がたったのだろう
僕の頭は幸いにして同じ髪型のまま存在するものの
灰色のハツカネズミになっているはずだ
なのに彼女はあの時のままのように思える

「いらっしゃいませ」

初めての客のように接する彼女
そうだろうな
随分月日が経ってしまったから
変わっていないなんて思うのは自分の胸の中にある願望だ

「何にいたしましょう」

「いつもの」
と言いかけて止める。
そんなことで僕のことを思い出してもらおうだなんて姑息だと思う
僕はいつもここではブレンドコーヒーしか頼まない
腹を空かせていそうだなと見破られたときは
そっとサンドウィッチを出してくれる
勿論代金は取らない

会計の時にマスターの方を振り返る
出世払いね
と目で合図する。
まあ、気長に待っているよ。
と彼は僕に向かってうなずく。

カウンターに座り振り返ると
そこにはスポットライトが当たっている
いつもそこで小説を読んでいる少女がいた

大学の講義をさぼってこの店に来ていた僕と
やはり高校の授業をさぼってここで紅茶を飲んでいる彼女
真っ白な背表紙に照明が反射して
タイトルは読めなかったけど

「ねえ、僕は君に恋をしていたんだと思う」

「……そうなんだ」
不思議と嫌がる素振り見せないどころか
少し微笑む彼女は、確かに１７歳の少女の顔

「嫌かもしれないけど
もうすぐ卒業だから話を聞いて欲しい」

そのころ、卒業を言い訳に別れる歌が流行っていて
大学生である彼ら、彼女らは美しい物語の結末を綴ろうとしていた。

でも僕と君には何の物語もない
だから

「だから？」

「だから、これから物語を作らないか？」

「これから？」

「そう
　僕は明日卒業してこの街を離れる
　でも、数年後には帰ってくる
　この街にいたときよりもっともっと絶望して帰ってくる
　外は白い雪が降っている
　手がしばれる
　透明に舞い上がる吐く息が空中で凍り付く
　それでも僕は倒れそうになりながらこの店にたどり着く
　ドアを開ける
　そこで君がやはりここで小説を読みながら紅茶を飲んでいる」

「私にその物語に付き合ってくれっていうの？」
「まあ、そう」
「冗談じゃない……とは言わない。」
「えっ？」
「私もあなたが好きだったから」
「本当？」
「多分」
「多分？」
「だって一度も話したことないよね、私たち」
「うん。まあ」
「でも、私はあなたが好きだった。カウンターに座って煙草をふかし
　珈琲を飲んで、難しそうに原稿用紙に向かってなにかを書いていた
　そんなあなたが」
「物語」
「えっ？」
「僕と君の物語を書いていた」
「どういうこと？」
「これから始まるぼくと君の物語」

吉田拓郎の「外は白い雪の夜」が有線放送から流れる。
そして僕は店を出る
原稿用紙を抱えて旅に出る
いつ帰ってこれるのか分からないけど
僕は書き続けなければならないのだろう
あの店に帰るために

「ねえ、私のどこが好きだったの？」
「さあ、それが分かったらこうして何十年も想い続けては
　いられないよ」
「私はここにいるよ。でも、ここにはいない」
「遅かったの？」
「遅すぎよ」

スポットライトの中には
紅茶のカップとあの時の小説

その小説は僕が書いたものだった。

2022年07月28日22:51

カテゴリ: 読書日記

悪人は厳罰に処すべきか③（12年ぶり）

早瀬俊@theater_shun
【死刑人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う/森達也】秋葉原事件の加藤死刑囚の死刑執行にともない、再び死刑について考える機会として。「死刑制度」は犯罪の抑止力にならないどころか、死を覚… → https://t.co/7Jf5pxzIGa #bookmeter
2022/07/28 22:34:08

死刑人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

てなわけで、
秋葉原事件の加藤死刑囚の死刑が実行されました。
元首相の殺害事件の取り調べ中のこの事件
自民党の国葬の強硬
関係がなければいいのだがとつぶやいたら
25万人ものPVがあり
改めてTwitterって怖いなと思いました。

そこで、12年前に読んだ森達也さんの「死刑」というルポを読み返しました。
そう、多くの犠牲者を出したこの事件
極刑は免れないとしても
最も大切な被害者の声や感情が伝わってこない。
光市母子殺害事件や池袋自動車暴走事件の被害者家族は
マスコミの偏向報道も覚悟で
犯人への厳罰を求める発言を繰り返したが
あのようなことは本当に異例のことだ

そして
このような残酷な事件が起こった背景には
本当に社会は影響していないのか
という検証が行われているのだろうか

秋葉原事件も安倍元総理殺害事件も
犯人は「死刑」による死を覚悟して起こしている
池田小学校事件の犯人もそう

勿論、多くの場合は厳罰が犯罪の抑止力になることは誤りではないだろう。
だが……。
という疑問が頭の中で回転する。

というわけで12年前のブログをここに載せたいと思います。
ただ、この長い年数の中で
日本国内の議論も
自分の考えも全く変化をしていない。
分からないで止まってしまっている。

もしも何かを変えたいのなら
この国でも死刑を廃止してみる。
それでどうなるかを確かめるしかないのだと思う。

※もちろん死刑廃止論者では私はありませんが

以下、2010年5月16日

てなわけで
　昨日午後にようやく夏タイヤに交換。
　その後急に吐き気と頭痛が酷くなり
　さきほどまで食事以外はほとんど寝てました。
　まあ、熱もないし大丈夫と思うのですが
　原因は今週一週間かけて読んだこの本でしょう。

　あんまり時間がなくて
　寝る前に読むものだから
　今週はずっと夢見が悪かったのでした。

　その位
　「死」と直接向き合った人の話と言うのは
　苦しい思いが伝わってくる。
　
　それを生で聞いた森さんの心中はどんなものだったか。
　
　そして迷走する森さんの
　「死刑」に対する考え方に
　僕自身も共鳴せざる負えませんでした。

　　　　　　　☆　☆　☆　

　悪人も私たちも同じ人間である。

　けれども
　悪人とそうでない者に分けることによって
　私たちは思考停止している。
　それが現実だろう。

　前にも書きましたが
　悪人を厳罰に処することで完全に満足する者はいない。
　それどころか、少しも救われていない。
　
　だからと言って
　罪を許す気になれないことも
　当事者あらば当然。
　自分の家族と同じ目にあわせてやりたいという感情論は分かる。

　大切なのは幸いなことに私たちの大多数が
　第三者である。
　そのことをわきまえなくていけないということなのだろう。

　選挙の票にならないから
　「死刑廃止」を声高に言えない政治家にもあきれるが
　匿名で殺人犯の弁護士を誹謗中傷する大衆にもうんざりする。
　十分な調査や理解のないまま煽るマスコミも呆れるし
　「死刑廃止論」や「厳罰強化」の考えに被害者を利用するのも論外だ。

　けれども、現実はそうだ
　「善意の第三者」が「潜在的な悪意」をもってこの件に関わる姿が
　物事を一層複雑にしている。第三者が自分の自己満足のために発言し
　行動することは害にしかならないだろう。

　この問題には
　潜在的な悪意がつねに潜んでいる。
　第三者の悪意が。
　当の本人たちが、それを悪意と思っていないことに問題があるのだ。
　

　その上であえて私見を言えば
　人は相手を「人間でない」と思わないと殺せない。
　
　死刑擁護をする人間は「殺人犯は人間でない」と思っているのだろうが
　そうではない。当たり前だ。
　一歩間違えばそれは明日のあなたの姿なのかもしれない。
　そのことを分かった上で、それでも死刑にすべきというならば
　そういう考え方もあるのだと納得するしかないと思う

2022年07月26日00:15

カテゴリ: フィクション; ひとりごと

のんびりしたい夏休み、あんなことより拓郎の、引退寂しい夏休み

てなわけで
国葬、宗教、新型コロナ、ついでにサル痘なんだそりゃ。
そんなことより、この暑さ
誰か助けてほしいのです。

あんなにのんびり過ごしたよ
子供の頃の夏休み
TVの向こうの事件など
田舎のこどもにゃ関係ない

誰かが死ぬのは悲しいね
人の命は地球より
ほんとに重いの、ねえ先生

そんな疑問も青空に
拡散していく
ああ眠い

今日やることはなんだろう
魚釣りしか浮かばない
浮きをみつめてあくびをし
帰ってスイカにかぶりつき

百恵ちゃんやら沙織ちゃん
近くにいないかわいい子
それでも恋の予感さえ
感じるマセガキ
夕闇に

何故かあの娘の顔うかび
勝手に頬を染めている

一人で過ごす夏休み
誰とも会わない夏休み
ガッコはすでに遠い場所

今は嬉しい夏休み
妄想好きな少年に
セミと蛙があざ笑う

2022年07月21日22:05

カテゴリ: ひとりごと

阿久悠さんとの会話③「ユーモアとは何か？」朝日川柳をめぐって

清らかな厭世―言葉を失くした日本人へ

阿久悠

新潮社

2007-10T

てなわけで、朝日新聞の川柳が話題になっています。
私も昔から「サラリーマン川柳」というのが好きで
「お～い、お茶」なんか見て思わずニヤリとしています。

阿久悠さんが語っています。
「ユーモアという言葉がいつの間に死語になってしまった。」
「近頃の紙やすりでこすり合うような人間関係も、
　　ユーモア不在が大きな原因となっていると思えてならない」
「かつてのドタバタは主人公が律儀で誠実で懸命であるがゆえに
　悲劇的状況になることを、ある種の同情をこめて笑っていた」

そうです。１９８０年代のつかブームは主人公が
　律儀で誠実で懸命であるがゆえに笑えたのである。

熱海殺人事件の大山金太郎と木村伝兵衛
蒲田行進曲のヤスと銀ちゃん

一生懸命っていうのはこんなにも笑えるのかと思って観ていました。
そうです。
人間のそんな馬鹿だけど愛おしい
恥ずかしいけどなんか分かる
そんな姿に笑ったのでした。

綾小路きみまろさんなんかもそうですね。
おばさん方の日々一生懸命に生きている姿を描くから
そこに喜劇と悲劇が生まれ
それをみたおばさんたち自身が笑ってしまいます。

僕も銀ちゃんにあこがれて馬鹿なことを平気でやってしまうヤスに共感して
笑ってしまいました。

さて、阿久悠さんは何故「ユーモアは死んだ」といったのでしょう。

何時の時代からか現れ主流になった「お笑い」とは
「主人公は傷つかない。主人公は被害者を指名して、皆で取り囲んで、
　まあ、逃れられない状況にしておいて、選択肢のない残酷を笑うのである」
そういう笑いが主流になったことは間違いない。
ひな壇にならべた誰かをみんなで笑いものにする。
学校でもそれをマネする輩が大量発生し
それがエスカレートして残酷ないじめへと発展することもある。

いつの時代からかユーモアとは＝笑いと考える人間が多数派になった。
笑わせれば何でもいいのだ
多数派がターゲットを残酷に笑うことが笑いの手法となってしまった。

さて、今回の朝日新聞の川柳ははたしてユーモアと言えるかどうか
それは明らかに違う
安倍元総理や自民党に日頃から恨みをもつ人間が
彼らをターゲットにして
新聞紙上という反論できない舞台で笑っているのである。
もちろん。笑った人はいたかもしれないが
これはユーモアではない。

・疑惑あった人が国葬そんな国
・利用され迷惑してる「民主主義」
・死してなお税金使う野辺送り
・忖度（そんたく）はどこまで続く　あの世まで
・国葬って国がお仕舞（しま）いっていうことか
・動機聞きゃテロじゃ無かったらしいです
・ああ怖いこうして歴史は作られる

僕はユーモアも大切な表現であると考えている。
表現者は常に様々な受け手（観客）の心を意識して
発信しなくてはならない。
一部の偏った考え方の人間のみを対象に発信するものは
宗教や政治団体としてはありえても
オープンな表現の場であってはならないと思う。

それと同時に演劇とか川柳とかが大切な表現だとしたら
それは何かを主張するための「手段」あるいは「道具」であってはならないと思う。
文句があるなら
もっとストレートに批判せよということである。
国会前で抗議活動している人々の方がよっぽど納得できるということである。

しかし、阿久悠さんは語る。
「ユーモアが欲しい。ユーモアの笑いは余裕である。
　過剰な競争心と、それによる被害妄想を優しくほぐす」

こんな殺伐とした時代に
安倍信者とアベガーがいがみ合う時代だからこそ
ユーモアが必要だと考えたとしたら
それは間違いではない。

しかし
これらの川柳はユーモアでない
誰も癒さない

そういう意味で落第点である。

皆さんはどう思いますか。

早瀬俊@theater_shun

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